平成あるある~「ローライズ(股上の浅いデニム)」が流行りすぎて、しゃがむと背中や下着が見えそうになるのを必死で隠す。
平成の街を歩けば、必ずと言っていいほど見かけたローライズデニム。股上の浅いシルエットがとにかくおしゃれとされていた時代、若者たちはこぞってウエスト位置の低いジーンズに脚を通しておりました。ただし、このアイテムには一つ大きな落とし穴がございました。それが「しゃがんだ瞬間の悲劇」です。電車の座席に座る時、床の物を拾う時、自転車の鍵をかける時。ふとした動作のたびに、背中や下着が見えそうになる恐怖と隣り合わせだったのを覚えている方も多いのではないでしょうか。今回は、そんなローライズデニムにまつわる平成あるあるを振り返ってまいります。
1.ローライズデニムとはどんなアイテムだったか
ローライズとは、パンツのウエスト位置を通常より下げ、股上を浅く設計したデザインのことです。一般的なジーンズの股上が27cm前後だったのに対し、ローライズブームの最盛期には股上18cm前後という、かなり短いタイプも珍しくありませんでした。フロントボタンがおへそよりかなり下にくるため、ウエストから上半身がすっきりと見える効果があり、当時の若い女性を中心に人気を集めました。
それまでのジーンズは股上が深く、おへその位置でボタンを留めるのが当たり前でした。そのため、ウエストのくびれがしっかりないとボタンが閉まらず、逆にヒップに合わせるとウエストがぶかぶかになってしまうという悩みを抱える人も少なくありませんでした。ところがローライズであれば、腰の位置さえ収まれば穿けてしまうため、体型を選ばずに履きこなせるという点も広く受け入れられた理由の一つだったようです。トップスの裾で隠してしまえば、お腹周りが多少気になる方でも堂々と穿けるという、ある意味で画期的な発明でもありました。
2.流行のピークと当時の街の空気感
ローライズデニムの流行は1990年代後半頃から徐々に広がり、2000年前後から2000年代初頭にかけて大きなピークを迎えました。海外セレブのファッションも注目を集め、その影響を受けたスタイルとして日本国内でも一気に浸透していきます。細身でウエスト位置の低いデニムに、丈の短いトップスを合わせるスタイルが定番となり、おへそやウエスト周りを見せることに抵抗がない空気が街に漂っておりました。
当時のシルエットはとにかく細身で、ビンテージ調の洗い加工が施された生地が主流でした。スタッズやラインストーンなどの装飾があしらわれた、いわゆる「デコデコ」なデザインも人気を集め、シンプルなデニムよりも何かしら飾りがついているアイテムの方が好まれる傾向にありました。原宿や渋谷といった若者の集まる街では、ローライズデニムに丈の短いTシャツを合わせ、腰回りをあえて見せるスタイルの女性たちが数多く見られたものです。今振り返ると大胆なスタイルですが、当時は誰もが当たり前のように穿きこなしていたのです。
3.しゃがむと見えそうになる恐怖の瞬間
ローライズデニムを穿いていた方なら、必ず経験があるはずです。それが「しゃがんだ瞬間に何かが見えそうになる」というヒヤリとする感覚です。コンビニで下の棚の商品を取ろうとした時、電車で床に落ちた定期券を拾おうとした時、体育座りをした時。背中側の生地がぐっと下がり、下着や腰の一部が覗きそうになる瞬間が日常のあちこちに潜んでいました。
特に危険だったのが、階段に座る場面や、床に座って作業をする場面です。ローライズデニムは前面だけでなく背面の生地もかなり浅く作られていたため、少し前かがみになるだけで背中側の腰骨のあたりまで見えてしまうことがありました。友人と一緒にいる時にお互い目配せをして、さりげなく後ろを気にし合うというのも、当時の女性同士ではよくある光景だったのではないでしょうか。また、男性の目線を意識しながら過ごさなければならない場面が多かったことも、このデニムならではの悩みだったと言えます。学校の教室でしゃがんで物を探す時や、駅のホームでしゃがんで荷物を整理する時など、日常のちょっとした動作のたびに気を張っていたという方も多かったはずです。
4.涙ぐましい対策の数々
このヒヤリとする瞬間を防ぐため、当時の若者たちはさまざまな工夫を凝らしていました。まず定番だったのが、しゃがむ際にとっさに手で腰の後ろを押さえる動作です。無意識のうちに体が反応するほど、多くの人が身につけていた防衛術でした。また、丈の長いトップスやパーカーを羽織ることで、腰回りをカバーするコーディネートも人気でした。
さらに、しゃがむ動作そのものを極力避け、膝を曲げずに前かがみになって物を拾うという独特の姿勢を編み出していた人も少なくなかったようです。友人同士では「後ろ見えてるよ」と声をかけ合うのが暗黙のルールになっており、お互いにさりげなく助け合う文化のようなものも生まれていました。中には、ローライズデニムの下にレギンスやスパッツを重ね穿きすることで、万が一見えてしまっても安心できるように対策を取っていた人もいたようです。学校の制服にローライズ風のスカートやパンツを合わせる際にも、体育の授業や掃除の時間にどう振る舞うかが密かな悩みの種になっていました。こうした涙ぐましい工夫の数々は、まさに平成ならではの青春の一コマと言えるでしょう。
5.下着メーカーも巻き込んだ社会現象
ローライズデニムの流行は、ファッション業界だけでなく下着業界にも波及しました。従来の股上が深いショーツでは、ローライズデニムを穿いた時にウエストゴムがはみ出してしまうという問題が発生したためです。そこで各下着メーカーは、ローライズデニムに合わせた股上の浅いショーツを次々と展開するようになりました。
流行が始まった当初は、股上の浅いショーツの選択肢がまだ少なく、普通のショーツを穿いてローライズデニムに合わせると、腰の後ろからゴムの跡がくっきり透けて見えてしまうことも珍しくありませんでした。それでも生地の伸縮や動作によっては、完全にカバーしきれない場面もあり、下着のラインが見えてしまう、いわゆる「パンツライン問題」に頭を悩ませた方も多かったのではないでしょうか。街を歩く女性たちの間では、どのブランドのショーツがローライズデニムに合うか、といった情報交換が交わされることもあったようです。デニムの流行一つで下着の規格にまで影響が及んだという点は、今振り返ると非常に興味深い現象です。
6.現代に蘇るローライズブーム
近年、Y2Kファッションのリバイバルブームにより、ローライズデニムが再び注目を集めています。当時とは異なり、現在はゆるめのストレートシルエットやワイドシルエットのローライズが主流となっており、肌見せの度合いも控えめに調整されている傾向があります。あえてアンダーウェアをチラ見せするようなレイヤードスタイルが、ファッションとして楽しまれている点も、平成の頃とは異なる令和らしい進化と言えるでしょう。
ただし、しゃがんだ瞬間に生地が下がりやすいという構造そのものは変わっておらず、令和の今も「見えそうになる問題」は健在のようです。平成の若者たちが必死に隠そうとしていたのに対し、令和の今はあえて見せることを前提にデザインされているというのは、時代の価値観の変化を感じさせる面白いポイントです。平成世代からすると、あの独特の緊張感が令和の若者にも共有されているのは、なんとも感慨深いものがあります。当時を知る世代がこのリバイバルブームを見ると、懐かしさと同時に「またあの頃の苦労を繰り返すのだろうか」という複雑な気持ちになる方もいるかもしれません。
7.まとめ
ローライズデニムは、平成という時代を象徴するファッションアイテムの一つでした。おしゃれである一方で、しゃがむたびにヒヤリとする緊張感と隣り合わせだったという点は、当時を過ごした方なら誰もが共感できる思い出ではないでしょうか。手で腰を押さえたり、丈の長いトップスでカバーしたりと、涙ぐましい工夫を重ねながらもファッションを楽しんでいた平成の若者たち。そんな青春の一コマを、懐かしい気持ちとともに振り返っていただけましたら幸いです。
💾 平成あるあるリンク & サイト横断
この記事とあわせて読みたい平成ネタ
昭和より新しいけど懐かしい平成の話をもっと見る
購読すると最新の投稿がメールで送信されます。
