平成あるある~「バザールでござーる」のお猿さんの語尾を真似する。
平成という時代、テレビCMは単なる宣伝媒体を超え、お茶の間の「共通言語」を生み出す巨大な文化発信源でした。その中でも、1991年(平成3年)に誕生し、瞬く間に日本中の子供から大人までを虜にしたキャラクターがいます。
NEC(日本電気)のキャンペーンキャラクター、「バザールでござーる」のお猿さんです。
「〜でござーる」という独特の語尾、シュールで愛らしいアニメーション、そして一度聴いたら耳から離れないリズム。本記事では、平成あるあるの代表格である「バザールでござーる」の魅力を徹底解剖します。
1. 「バザールでござーる」誕生の背景:NECのイメージ戦略
1990年代初頭、パソコン(PC-98シリーズなど)や通信機器の分野で圧倒的なシェアを誇っていたNEC。しかし、当時のハイテク機器は「難しそう」「堅苦しい」というイメージが先行していました。その壁を打ち破るために投入されたのが、あの黄色いお猿さんでした。
企画の天才たちが集結
「バザールでござーる」を手掛けたのは、後に『ピタゴラスイッチ』や『だんご3兄弟』、現在もクリエイティブディレクターとして第一線で活躍する佐藤雅彦氏です。彼の計算し尽くされた「シンプルかつ中毒性のある演出」が、このCMの根幹にありました。
名前とキャラクターの由来
「バザール(市場)」と「ござる(居る・〜である)」を掛け合わせたダジャレのようなネーミング。そして、バザール一家という設定。一見すると単純な構成ですが、そこには「NECに行けば何か新しい発見(バザール)がある」というメッセージが込められていました。
2. なぜ私たちは「〜でござーる」と口走ってしまったのか?
このCMの最大の特徴は、なんといっても語尾のインパクトです。なぜ、これほどまでに模倣されたのでしょうか。
言語学的な「心地よさ」
「〜でござる」は、本来は侍が使う古風な言葉です。それを「〜でござーる」と語尾を伸ばすことで、脱力感と親しみやすさが生まれました。この「脱力感」こそが、バブル崩壊後の少し疲れた日本人の心に、スッと入り込んだ理由の一つだと言われています。
子供たちの「ごっこ遊び」の定番
当時の小学生にとって、語尾を「〜でござーる」に変えるのは最も手軽で面白い遊びでした。
- 「宿題やるでござーる」
- 「給食の時間でござーる」
- 「先生が来たでござーる」 このように、日常のあらゆる動詞に接続できる汎用性の高さが、爆発的な流行を後押ししました。
3. 映像表現の革新:あえての「シンプル・アニメーション」
平成初期、テレビCMは豪華なセットやCGを多用する派手な演出が主流でした。その中で「バザールでござーる」が採用したのは、驚くほどシンプルな線画のアニメーションでした。
視覚情報の「引き算」
派手な色使いをせず、キャラクターの動きと声だけに集中させる構成。これは、情報過多なテレビの中で逆に視聴者の目を引く「ステルス効果」がありました。
独特の「間」とテンポ
ナレーション(財津一郎さんの声が有名ですが、バザール本人の声はまた別の独特なトーンでした)と、お猿さんのトボトボとした動き。この「間」が、シュールな笑いを生み出しました。 「NECのお店へ行くでござーる」という決まり文句の後の、一瞬の静寂。これが視聴者の脳に「余白」を作り、記憶への定着を助けたのです。
4. グッズ展開と「バザールでござーる」現象
単なるCMキャラクターに留まらず、バザールでござーるは「キャラクタービジネス」としても大成功を収めました。
ノベルティの希少価値
当時のNEC製品(パソコンやワープロなど)を購入するともらえるカレンダー、ぬいぐるみ、タオルなどのノベルティは、喉から手が出るほど欲しいお宝アイテムでした。特に、年末の「バザールでござーるカレンダー」は、企業の配り物としては異例の、家庭の居間に飾られる定番アイテムとなりました。
攻略本まで出た?
意外なことに、バザールでござーるはゲームソフト(PCエンジンの『バザールでござーるのゲームでござーる』など)としても展開されました。パズルアクションとしての完成度も高く、キャラクター人気が単なる一過性のブームではなかったことを証明しています。
5. 平成カルチャーとしての「語尾キャラ」の系譜
「バザールでござーる」の成功は、その後の広告業界やアニメ業界における「特徴的な語尾を持つキャラクター」の確立に大きな影響を与えました。
語尾変革の歴史
それまでも「〜だっちゃ(うる星やつら)」などの例はありましたが、実在の企業CMが全国民に語尾を浸透させた功績は計り知れません。 後年の「おじいさんは言いました(日本昔ばなし風)」や、さらには現代のネットスラングにおける語尾の改変文化の土壌を、このお猿さんが耕したと言っても過言ではありません。
6. NECの技術革新と「バザール」の歩み
CMの裏側で、NECは「PC-9800シリーズ」からWindowsマシンへの移行、そしてインターネットの普及という、IT史における最も激動の時代を戦っていました。
難解な技術を「お猿」が解説
ISDN、プロバイダ、マルチメディア。今では当たり前の言葉も、当時は最新鋭で難解な概念でした。これらを「バザールでござーる」がコミカルに紹介することで、ITアレルギーを持つ層への橋渡し役を果たしました。 お猿さんがパソコンを操作する姿を見て、「自分にもできるかも」と思った平成のお父さん、お母さんは多かったはずです。
7. 2000年代以降の変遷と「引退」の真相
1991年に始まったこのシリーズは、なんと20年以上も愛され続けました。しかし、時代の変化とともに徐々にその姿を見かける機会は減っていきます。
広告戦略の転換
2000年代後半になると、企業の広告戦略は「イメージキャラクター」から、よりダイレクトな「サービス内容の訴求」や「SNS連動」へとシフトしていきました。 NECもBtoC(個人向け)からBtoB(企業向け)へと事業の主軸を移していく中で、お猿さんの役割は一つの区切りを迎えることになります。
現在も公式サイトでひっそりと?
実は、NECの公式サイト内には現在もバザールでござーるのコーナーが存在することがあります(更新状況により変動)。長年愛されたキャラクターだからこそ、簡単には消し去れない「企業の顔」としての誇りを感じさせます。
8. 「バザールでござーる」が私たちに残したもの
あの頃、テレビの前で「〜でござーる」と真似をしていた子供たちは、今や30代、40代の社会人となっています。
ノスタルジーとしての価値
ふとした瞬間に「〜でござーる」と口に出してしまう時、私たちは単に言葉を発しているのではなく、平成という時代の「空気感」を思い出しています。
- 家族で夕食を囲んでいたリビング。
- まだ分厚かったブラウン管テレビ。
- 翌日の学校で友達と競い合ったCMのモノマネ。
それは、インターネットがまだ「未知の扉」だった時代の、少しの不安と大きな期待が入り混じった幸福な記憶です。
9. 現代における「バザール的」マーケティングの再評価
昨今のSNSマーケティングにおいて、バザールでござーるの手法は非常に参考になると再注目されています。
- 究極のシンプル化: 情報過多な現代だからこそ、一目でわかるキャラクターと短いフレーズの価値。
- ユーザーの参加性: 「真似したくなる」という要素は、現代のTikTokのダンスチャレンジなどに通じる本質的な魅力。
- ブランドの擬人化: 冷たいハイテク企業に「体温」を与えたキャラクターの功績。
もし今、バザールでござーるがTwitter(現X)のアカウントを持っていたら、間違いなく数百万人のフォロワーを抱える人気インフルエンサーになっていたことでしょう。
10. まとめ:永遠に心の中で「ござーる」
「バザールでござーる」は、単なる一企業のCMキャラクターではありませんでした。それは平成という時代が求めた、「ユーモアという名の清涼剤」だったのです。
どんなに技術が進歩し、生成AIが登場し、世界が複雑になっても、私たちはあのシンプルなお猿さんの動きと、間の抜けた語尾に癒やされます。
「きれいなおねえさん」にドキッとし、「武富士」のダンスに釘付けになり、そして「バザールでござーる」で笑う。これらすべてが、私たちが平成という時代を全力で生きてきた証です。
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