大切にしていたのになぜ?スーパーファミコンの黄ばみの原因と平成世代が感じた「あの切なさ」

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はじめに:丁寧に使っていたのに、いつの間にか黄色くなっていた

平成あるある~「スーパーファミコン」の黄ばみ

大切に使っていたはずなのに、本体の下半分だけがなぜか激しく黄ばんでいく現象。

押し入れの奥から久しぶりにスーパーファミコンを取り出してみると、かつてのライトグレーの本体が、どこかくすんだ黄色みを帯びている——。そんな経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。

しかも黄ばみ方が不思議で、本体の上部はまだ比較的きれいなのに、下半分だけが明らかに黄色くなっていたり、カセットの裏側だけが変色していたり。「直射日光に当てていないのに」「ちゃんと箱にしまっていたのに」——心当たりがないまま進む黄変は、平成の子どもたちに小さな謎と切なさを残してきました。

本記事では、スーパーファミコンの黄ばみがなぜ起きるのか、その科学的な原因と、あの黄ばみにまつわる平成あるあるを、事実に基づいて振り返ります。


第1章:スーパーファミコンとはどんなゲーム機だったのか

スーパーファミコン(以下、スーファミ)は、任天堂が1990年(平成2年)11月21日に発売した家庭用ゲーム機です。発売価格は25,000円で、同時発売ソフトは『スーパーマリオワールド』と『F-ZERO』でした。日本国内での販売台数は約1,717万台にのぼります。

日本版スーファミ本体のボディカラーは落ち着いたライトグレーを基調としており、リビングに馴染む上品なデザインが特徴でした。ロゴ部分には赤・黄・青・緑の4色が使われ、これはコントローラーのA・B・X・Yボタンの色に対応しています。

発売当初は人気で品薄が続き、その後も『ファイナルファンタジーIV』(1991年)、『ドラゴンクエストV』(1992年)、『スーパーマリオカート』(1992年)など数多くの名作が発売され、平成の家庭用ゲーム機市場を牽引しました。

そのスーファミが、使用しているうちに黄ばんでいく——これは当時から多くのユーザーが体験した現象です。


第2章:黄ばみの正体——ABS樹脂と難燃剤の宿命

スーパーファミコン本体の外装に使われているのは、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)と呼ばれる合成プラスチックです。ABS樹脂は剛性・加工のしやすさ・衝撃への強さのバランスが優れており、家電製品やゲーム機の筐体に広く使われてきた素材です。

この素材が黄ばんでいく原因として、主に以下の要素が挙げられています。

ひとつは、難燃化のために添加された臭素系の化合物です。電子機器のプラスチック部品には、安全上の観点から燃えにくくする難燃剤が添加されることがあります。この難燃剤に含まれる臭素系の成分が紫外線(UV光)を受けることで化学反応を起こし、プラスチックが黄変するとされています。

もうひとつは、酸化防止剤の化学変化です。プラスチックの劣化を遅らせるために添加されている酸化防止剤が、経年とともに化学変化を起こして黄ばみを生じさせることがあります。こちらは紫外線のない暗所での保管でも起こり得るとされています。

つまり、直射日光に当てた場合は紫外線によって黄変が加速し、箱の中にしまっていても酸化防止剤の変化によってじわじわと黄ばんでいく——「どう保管しても黄ばんでいく」という構造的な宿命がスーファミにはあったのです。


第3章:「下半分だけ」が黄ばむ謎

スーファミを実際に所有していた方の多くが経験したのが、「本体の下半分だけが不均一に黄ばんでいる」という現象です。上半分はまだグレーを保っているのに、下のパーツだけが明らかに変色している——この謎に思い当たる方は多いのではないでしょうか。

この部分的な黄変については、いくつかの要因が複合していると考えられています。

スーファミ本体の内部では、基板や電子部品が発する熱が筐体下部に溜まりやすい構造になっています。プラスチックの黄変は熱の影響を受けて加速する場合があるとされており、長時間のゲームプレイ中に熱が集中しやすい部分ほど変色が進みやすい可能性があります。

また、設置環境の影響も考えられます。テレビ台の上に置いた場合、下側は木材や台の表面と接触・近接しており、通気性が限られます。対して上面は空気に触れやすく、環境条件が異なります。

さらに、製造時の樹脂ロットのわずかな違いや、成形条件の差異によって、同じ機種でも部位ごとに添加剤の含有量や分布にばらつきがある可能性も指摘されています。

これらの要因が重なり、「上下で黄ばみ方が異なる」という現象が生じたと考えられますが、部分的な黄変のメカニズムについては複数の要因が複合しており、単一の明確な答えがあるわけではありません。


第4章:カセットの「裏側だけ」が黄ばむ現象

スーファミ本体だけでなく、カートリッジにも同様の黄変が起きていました。そしてカートリッジで特に目立ったのが「表側はきれいなのに裏側だけが黄ばんでいる」という現象です。

カートリッジの裏側には基板が固定されており、動作中に生じる熱が裏面のプラスチックに集中しやすい構造になっています。熱が長時間にわたって作用することで、裏面の黄変が表面より早く進行するという説が、製造に携わった経験を持つ方たちからも語られています。

中古ゲームショップでスーファミのカセットを手に取ると、表面は比較的きれいなのに裏返すと一目でわかるほど黄色くなっている——という光景は、レトロゲームファンには見慣れたものです。この「裏だけ黄ばみ」は、カートリッジの構造と熱の関係を示す、わかりやすい痕跡とも言えます。


第5章:「黄ばんだスーファミ」への複雑な感情

黄ばんでいくスーファミに対して、当時の子どもたちや家族はさまざまな反応を示していました。

「ちゃんとしまっておいたのに」という親からの小言。「なんで汚くなるんだろう」という子ども自身の素朴な疑問。経年変化の理由を知らないまま、「乱暴に扱ったせいだ」と誤解されてしまうケースもあったかもしれません。

一方で、黄ばみが「使い込んできた証」として愛着のシンボルになっていた面もあります。たくさんのゲームをプレイした記憶が染み込んでいるような、あの黄みがかった色——。令和になってレトロゲームが見直される中で、「あの黄ばみも含めてスーファミらしい」という視点を持つ人も少なくありません。


第6章:黄ばみを「戻す」試み——レトロブライトという方法

黄変したスーファミの外装をできるだけ元の色に近づけようとする方法として、「レトロブライト(Retr0bright)」と呼ばれる手法がレトロゲームファンの間で知られています。

これは過酸化水素を含む漂白剤(日本では「ワイドハイターEXパワー」などが用いられることがあります)でプラスチック部品を処理し、紫外線(日光)に当てることで、臭素系難燃剤の黄変を化学的に元に戻すというものです。難燃剤の黄変に対しては一定の効果があると報告されているものの、プラスチック素材そのものの劣化による変色には効果が限られます。また、漂白処理はロゴやラベルが白くなったり、素材を傷めるリスクもあるため、作業には注意が必要です。

この「レトロブライト」という取り組みがレトロゲーム愛好者の間で広まっていること自体、スーファミの黄ばみが単なる劣化ではなく、多くの人が向き合い続けてきた共通の課題であることを示しています。


まとめ:あの黄ばみは、平成の時間が刻んだ痕跡だった

スーパーファミコンの黄ばみは、ABS樹脂に添加された難燃剤や酸化防止剤が引き起こす化学的な変化であり、大切に扱っていても避けがたい経年変化でした。

「なんで黄ばんでいくんだろう」と首をかしげながら眺めていたあの本体は、今となってはその黄みがかった色ごと「平成のゲーム文化の証人」として、多くの人の記憶と押し入れの奥に静かに残っています。

ライトグレーのきれいな本体で初めて電源を入れた日の高揚感と、時を経て黄ばんでいった本体を久しぶりに手に取ったときのしみじみとした懐かしさ——どちらもスーファミという機械が持つ、平成ならではの記憶の層です。


本記事は、スーパーファミコンの仕様・ABS樹脂の特性・黄変の原因に関する一般的な事実および複数の情報源をもとに執筆しています。黄変のメカニズムには複数の要因が関わっており、部位ごとの変色差については現在も複数の説が存在します。


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