Enterキーだけ「ターン!」と強く叩いてしまう!平成のパソコンあるあると、なぜそうなるのかの心理・理由

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はじめに:他のキーは普通に打つのに、Enterだけが別格だった

平成あるある~パソコンのキーボードの「Enter」キーだけ、なぜか「ターン!」と強く叩いてしまう。

パソコンでメールを書いているとき、ウェブ検索のキーワードを打ち終えたとき、書類の入力を終えたとき——「カタカタカタ……ターン!」。他のキーはごく普通にキーボードを叩いているのに、最後のEnterキーだけなぜか力が入って、「ターン!」と音を立てて叩いてしまう。

平成にパソコンが家庭や職場に普及し始めた頃から、このEnterキー強打現象は多くの場所で観察されてきた行動です。自分でも気づかないうちにやっていた方、職場の同僚がEnterを叩くたびに机が揺れると感じていた方、あるいは「なんで自分はこんなに強く押してしまうんだろう」と不思議に思っていた方——Enterキーをめぐるこの「あるある」は、幅広い世代に共有される記憶です。

本記事では、Enterキーとはそもそもどのようなキーなのか、なぜ人はEnterを強く叩いてしまうのか、その歴史と心理を、事実に基づいて振り返ります。


第1章:Enterキーとはどのようなキーなのか——その歴史

Enterキーは、パソコンのキーボード上でデータ入力の確定・改行・コマンドの実行などに使われるキーです。現在では「Enter」という名称が一般的ですが、その歴史を遡ると「RETURN(リターン)」キーとも呼ばれていた経緯があります。

Wikipediaによれば、キーボードのモデルとなった英文タイプライターにおいては、一定の文字を打ち込んだ後にリターンキーを叩くと文字を打ち込む部分が行の先頭に戻る操作が行われており、これを操作終了の確認に叩く形としたのがこのキーの起源です。初期のパーソナルコンピュータでは「RETURN」の刻印が多数派でしたが、IBM PC互換機の普及とともに「Enter」が主流となっていきました。

日本において圧倒的なシェアを誇っていたNEC(日本電気)のPC-9800シリーズでは、「RETURN」とも「ENTER」とも記されておらず、記号のみが刻印されていたという歴史も興味深い点です。

Enterキーの物理的な特徴として、多くのキーボードで他のキーより大きめに作られており、逆L字型や横長の形状を持つものが多いことが挙げられます。この「目立つサイズ」という設計も、Enterキーに特別な存在感を与えています。


第2章:「文章の終わり」を打つ行為がもたらす心理的な力

Enterキーを他のキーより強く叩いてしまう現象には、心理学的な観点からの説明があります。

心理学者の内藤誼人先生への取材(ニコニコニュース、2015年)によれば、Enterキーを強く押す人は「文字のはらいの部分や文の最後の句点に力を入れる人と同じ」タイプだと考えられるとのことです。「エネルギッシュで活動的な性格の人が多い」とも語っており、「こういう人は言葉遣いも抑揚がありますし、歩くときもどこかリズミカルに見えます。動きのすべてに、その人のリズムがあるのでしょう。静かにキーボードを打つ人は抑制的で、歩き方も話し方も静かな人が多いですよ」と続けています。

この説明を踏まえると、Enterキーは「入力の終わり・決定の瞬間」を告げるキーであり、文章でいえば句点や改行、書道でいえばハネや払いにあたる「締めくくりの動作」に力が入りやすい——そういう人間の本能的なリズム感覚が、Enterキーを強く叩く行動を生み出していると考えられます。


第3章:「決定する」という行為の重さが手に伝わる

Enterキーが強く叩かれるもうひとつの理由として、「決定・確定」という行為が持つ心理的な重みが考えられます。

他のキーは入力途中の動作です。「A」を押しても「B」を押しても、それはまだ文章の一部に過ぎません。しかしEnterキーを押すことは「これで確定する」「これで送信する」「これで検索を実行する」という「決めの瞬間」を意味します。

検索エンジンで「検索」ボタンを押す感覚、メールの「送信」ボタンをクリックする感覚——それと同じ「決断」の感覚がEnterキーには込められています。決断や確定の瞬間には、人は自然と少し気持ちが高ぶるものです。その高ぶりが、無意識のうちに指先の力となって現れる——これがEnterキーだけ力が入ってしまう一因と考えられます。

特に、大事なメールを送信するときや、重要な書類の入力を終えたときには、普段より強くEnterを叩いてしまった経験がある方も多いのではないでしょうか。


第4章:平成のパソコン普及期に広まった「キーボードを叩く」文化

Enterキー強打の現象が特に目立ったのが、平成にパソコンが職場や家庭に普及し始めた時代でした。

それまでの昭和の職場では、タイプライターか手書きが当たり前でした。タイプライターは、キーを押すと物理的な力でインクリボンが用紙に打ちつけられる仕組みであり、文字を打つには一定の力が必要でした。そのため、タイプライターに慣れた世代がパソコンのキーボードに移行した際、かつてのタイプライターを叩く力加減がそのままキーボード操作に反映されることがありました。タイプライターのリターンキーは特に力を入れて叩くことが自然だったため、その感覚がパソコンのEnterキーにも受け継がれた可能性があります。

また、平成初期のキーボードはメンブレン式(シートを押してスイッチを入れる方式)よりも、より重いタッチのものが多く、強めに押さないと入力が認識されないという実用的な側面もありました。初期のパソコンに触れた世代が「強く押さないと入力されない」という体験を持っていたとすれば、それが習慣として定着したとも考えられます。


第5章:「Enterを強く叩く人」をめぐる職場のあるある

Enterキーの強打は、職場での微妙な人間関係のネタになることもありました。

オープンオフィスで誰かがEnterを「バチン!」と叩くたびに、周囲の人がそちらを向いてしまう。「また始まった」と内心思いながらも何も言えない——職場におけるEnterキー強打は、ちょっとした「あるある」として広く共有されてきました。

Enterキーを強く叩く現象についての調査(ニコニコニュース、2015年)では、「自己主張が強い」「人の話の途中に会話をかぶせてくる」「自己顕示欲が強い上司に多い」という声がある一方、「仕事はできる人」という声もあり、仕事の能力との関係は一概には言えないとされています。

強打の原因として、ストレスや感情の高ぶりが影響する場合もあると考えられています。上司に叱られた後、イライラを抱えた状態でパソコン作業をしていると、物を投げたり大声を出したりするより遠慮しながらも、Enterキーに八つ当たりしてしまう——という心理もあるようです。

職場のEnterキー強打は、その人の感情のバロメーターとして機能していたとも言えるかもしれません。


第6章:キーボードの進化と「Enterを叩く」文化の現在

キーボード技術の進化により、現代のキーボードはより軽いタッチで確実に入力できる設計になっています。

メンブレン式からパンタグラフ式、さらにメカニカルスイッチやシザーズスイッチへと多様化したキーボードは、それぞれ異なるタッチ感を持ちます。特にノートパソコンのキーボードは薄型化・軽量化が進み、強く叩かなくても軽いタッチで入力できるものが増えました。

また、タッチパネルを使ったスマートフォンやタブレットでの操作が日常になり、「キーを押す」という行為そのものが若い世代には馴染みの薄いものになりつつあります。スマートフォンのフリック入力では「Enterを強く叩く」という概念が存在しません。

それでも、パソコンでのタイピングをする人にとって、Enterキーを強めに叩いてしまうという習慣はなかなか抜けないようです。「決定する瞬間に力が入る」という心理は、キーボードが変わっても変わらない人間の本質的な行動パターンなのかもしれません。


まとめ:「ターン!」の一打には、決断と達成感が詰まっていた

Enterキーだけ「ターン!」と強く叩いてしまうのは、入力の締めくくりに力が入るという人間の自然なリズム感覚、「決定・確定」という行為の心理的な重み、そして平成のパソコン普及期の操作習慣が複合した、ごく自然な行動でした。

「カタカタカタ……ターン!」——あの音には、メールを送り終えた達成感、検索ボタンを押す期待感、書類を完成させた充実感が込められていたとも言えます。

タイプライターからパソコンへ、そしてスマートフォンへと入力機器が変化してきた中で、Enterキーを強く叩くという行動は、キーボード文化が花開いた平成という時代を象徴する、小さくて愛おしいあるあるのひとつです。


本記事は、Enterキーの歴史に関するWikipedia等の公開情報および心理学者の内藤誼人先生の見解(ニコニコニュース・2015年掲載)に基づいて執筆しています。Enterキーを強く叩く原因や傾向には個人差があります。


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