平成あるある~平成の終わりが近づくにつれ、「平成最後の夏」「平成最後の〇〇」というキャッチコピーが街中に溢れ、なんでも「平成最後」とつければ特別感が出た。
2019年(平成31年)4月30日、平成という時代が幕を閉じました。この改元は天皇陛下の崩御によるものではなく、譲位という形で行われた約200年ぶりの出来事であり、生きている誰もが経験したことのない特別な改元として大きな注目を集めました。そしてその前年、2018年の夏あたりから、街中には「平成最後の夏」「平成最後の〇〇」というキャッチコピーがあふれ返るようになりました。何気ない日常の言葉に「平成最後」と付け加えるだけで、不思議と特別感が生まれ、多くの人がそのフレーズに心を動かされたものです。今回は、そんな「平成最後」現象がなぜあれほど盛り上がったのか、当時の社会の空気感を振り返りながら考えていきます。
1.「平成最後」というフレーズが街にあふれた背景
2017年12月、天皇陛下の退位日が2019年4月30日に決まったことが正式に発表されると、日本中で「次の元号は何になるのか」「平成が終わるとはどういうことなのか」という話題が一気に盛り上がりました。それまで元号が変わるといえば天皇陛下の崩御に伴うものというイメージが強く、お祝いムードとはかけ離れたものでした。しかし今回は生前退位という前向きな形での改元だったこともあり、世間はどこか祝祭的な雰囲気に包まれていきました。
企業やお店にとっても、この「平成最後」という言葉は絶好の販促材料になりました。普段と同じ商品やイベントであっても、「平成最後」と冠するだけで、なんとなく今しか手に入らない特別なものに感じられる。そうした心理的な効果を狙って、飲食店から百貨店、旅行会社に至るまで、あらゆる業種がこぞってこのフレーズを使い始めたのです。
2.「平成最後の夏」に人々が求めたもの
2018年の夏は記録的な猛暑だったこともあり、テレビや雑誌では連日「平成最後の夏」という言葉が飛び交いました。花火大会や夏祭りのポスターにこの一言が添えられるだけで、なんとなく足を運んでおかなければという気持ちにさせられた方も多いのではないでしょうか。
普段なら見送っていたイベントも、「平成最後」と言われると急に貴重な体験に思えてくる。これは、人が「今しかない」「二度と戻ってこない」というものに弱いという心理をうまく突いた現象だったといえます。夏休みの旅行先を選ぶときも、「平成最後の夏休み」という響きに背中を押されて、少し奮発した旅行プランを選んだという人も少なくなかったはずです。
3.「平成最後の〇〇」があらゆる場面に登場
夏だけでなく、この言葉はあらゆるシーンに浸透していきました。「平成最後のクリスマス」「平成最後の大晦日」「平成最後のお正月」「平成最後の花見」など、季節の行事のたびにこのフレーズが繰り返し使われ、まるで平成という時代そのものを名残惜しむかのような空気が日本中を包んでいました。
学校の卒業式でも「平成最後の卒業生」という言葉が使われ、生徒たちの門出に特別な重みを添えていました。また、家電量販店では「平成最後の初売り」、スーパーでは「平成最後の年末セール」といった具合に、商業施設のセールスコピーとしても大活躍しました。普段のセールと中身はほとんど変わらなくても、「平成最後」という一言が加わるだけで、消費者の購買意欲を後押しする効果があったのです。
食品メーカーも例外ではありませんでした。「平成最後の恵方巻」「平成最後のバレンタイン限定パッケージ」など、季節商品にこの言葉を添えることで、コレクション欲を刺激する狙いもあったようです。パッケージに「平成最後」の文字を印刷しただけの商品でも、記念に買っておこうという気持ちにさせられた人は多かったのではないでしょうか。テレビ番組でも「平成最後の紅白歌合戦」「平成最後の箱根駅伝」といった具合に、毎年恒例の行事すべてに特別な冠がつけられ、視聴者の関心を集める演出として機能していました。
4.改元発表とともに最高潮を迎えたブーム
2019年4月1日、当時の菅義偉官房長官が新元号「令和」を発表した瞬間は、多くの人がテレビや職場でその中継を見守った記憶に残る出来事でした。新元号が発表されてから改元までの1か月間は、まさに「平成最後」ブームの集大成ともいえる期間でした。
この1か月間は、テレビ各局が特集番組を組み、平成の30年間を振り返る企画が連日放送されました。バブル崩壊、阪神・淡路大震災、東日本大震災、インターネットの普及、携帯電話からスマートフォンへの移行など、平成という時代に起きた出来事を振り返る特集が組まれるたびに、視聴者は自分自身の平成時代の記憶と重ね合わせながら、この時代の終わりを実感していきました。
改元前夜となる4月30日には、各地の神社仏閣やテーマパーク、観光地に多くの人が詰めかけ、「平成最後の日」を思い思いの形で過ごしました。カウントダウンイベントを開催する施設もあり、まるで年越しのような盛り上がりを見せた場所も少なくありませんでした。
5.令和への改元と「平成レトロ」ブームへの流れ
2019年5月1日、新天皇の即位とともに元号は令和へと変わりました。皇太子さまが即位されたこの日をもって、「平成最後」というフレーズもその役目を終えることになります。しかし面白いことに、時代が変わった直後から、今度は「平成」という時代そのものを懐かしむ動きが少しずつ広がっていきました。
近年では「平成レトロ」という言葉とともに、ガラケー文化やプリクラ、ルーズソックス、ポケットベルといった平成初期・中期のカルチャーが再評価される動きも見られます。昭和レトロがブームになったのと同じように、平成という時代もまた、少しずつ懐かしさをもって語られる時代になりつつあるのです。「平成最後」という言葉で名残を惜しんだあの日々が、今度は「あの頃の平成」として新たな形で思い出されているのは、なんとも興味深い現象だといえるでしょう。
特に平成後期に子ども時代や青春時代を過ごした世代にとって、当時流行した音楽やファッション、テレビ番組は懐かしさの対象になりつつあります。SNS上でも「平成生まれあるある」といったテーマで当時の思い出を語り合う投稿が増えており、時代が変わってから改めてその時代の輪郭がはっきりと見えてくるという現象は、昭和から平成への移り変わりのときにも見られたものです。時間が経つほどに、その時代特有の空気感や流行が愛おしく感じられるようになるのかもしれません。
6.「平成最後」現象が教えてくれること
振り返ってみると、「平成最後の夏」「平成最後の〇〇」というフレーズがこれほどまでに広まった背景には、単なる販促文句という以上に、多くの人が時代の節目そのものに特別な意味を見出したいという気持ちがあったのではないでしょうか。普段の生活の中で「今」という瞬間を意識することは少ないものですが、元号の変わり目という誰もが共有できる大きな節目があったからこそ、人々は日常の一つひとつの出来事を丁寧に味わおうとしたのかもしれません。
平成生まれ、昭和生まれを問わず、多くの人があの時期を振り返ると「平成最後」という言葉とともに、当時の自分の生活や気持ちを思い出すのではないでしょうか。時代の変わり目に立ち会えたという経験は、今振り返っても貴重なものです。次に元号が変わるとき、私たちはまたどんな言葉で、その節目を彩ることになるのでしょうか。
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