レジの「手打ち」が神業だった!バーコード前の時代、猛スピードで打つ店員さんに見惚れた昭和・平成あるある

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はじめに:あの指の動きに、子ども心に見惚れていた

平成(昭和も)あるある~スーパーのレジ打ちの人(アルバイトの兄ちゃんや姉ちゃん)が、バーコードリーダーではなく「手打ち」で凄まじいスピードを見せていた時代。

昭和から平成の初め、スーパーやお店のレジで会計を待っているとき、思わず見入ってしまう光景がありました。レジ係のアルバイトのお兄さんやお姉さんが、商品の値札を見ながら、レジのキーを目にも留まらぬ速さで叩いていく——あの「手打ち」の神業です。

商品を左手で取り、値段を一瞬で確認し、右手の指がキーボードの上を踊るように動く。「ピッ、ピッ、ピッ」というスキャン音ではなく、「カチャカチャカチャッ」という機械的なキー音とともに、次々と金額が打ち込まれていく。そのスピードと正確さは、見ている側からすると一種の職人芸であり、「すごいなあ」と感心しながら眺めていた方も多いのではないでしょうか。

本記事では、バーコードが普及する前の「手打ちレジ」の時代を振り返りながら、あの猛スピードの手打ちがなぜ可能だったのか、そしてレジがどのように進化してきたのかを、事実に基づいて紐解いていきます。


第1章:レジスターの歴史と「手打ち」時代の始まり

お会計のときに活躍するレジ(レジスター)は、長い歴史を持つ機器です。日本には1897年(明治30年)に横浜の貿易商によって初めて輸入され、デパートの普及とともに機械式のレジスターが導入されるようになりました。日本独自の開発が行われるようになったのは1926年(大正15年)のことです。

第二次世界大戦後、日本の復興とともに成長したのがスーパーマーケットでした。日本のセルフサービス・スーパーの発端は、1953年(昭和28年)の青果店「紀ノ国屋」によるセルフサービスの導入と言われています。1960年前後には、ダイエー、イトーヨーカ堂、岡田屋(現在のイオングループ)などがチェーン展開し、スーパーは著しい成長を遂げました。

こうしたスーパーやお店のレジでは、長らく「手打ち」が当たり前でした。レジ係が商品の値段を一つひとつ目で確認し、レジのキーを手で打ち込んで金額を入力していく——これが会計の基本的なスタイルだったのです。機械式レジスター(メカレジ)から電動式レジスター(ECR)へと進化を遂げながらも、「人が値段を見て手で打つ」という作業そのものは長く続いていました。


第2章:バーコードとPOSシステムの登場

「手打ち」の時代を終わらせていくきっかけとなったのが、バーコードとPOSシステムの登場です。

POS(Point of Sale)システムとは、経済産業省(旧通商産業省)の定義によれば、光学式自動読取方式のレジスターによって単品別に販売情報を収集し、仕入や配送などの各種情報とあわせてコンピューターで処理・活用するシステムです。

日本では1972年(昭和47年)に、ダイエーと三越百貨店が日本で初めてバーコードによる自動チェッキングシステムの実験を行いました。ただしこの時点では商品にバーコードは印刷されておらず、実験のためにバーコードを貼り付けて行われたものでした。

その後、1980年(昭和55年)頃から、新たな「POSシステム」と、同じくこの頃から広まったバーコードを利用した商品管理がオンライン上でできるようになっていきます。商品のバーコードをリーダーで読み取れば、あらかじめ登録された商品名や単価が自動的に表示される——この仕組みによって、レジ係が値段を手で打ち込む必要がなくなっていきました。


第3章:なぜバーコードの普及には時間がかかったのか

バーコードとPOSシステムは画期的な技術でしたが、その普及には一定の時間がかかりました。

大きなネックとなったのが、「すべての商品にバーコードを付ける」という手間でした。バーコードを読み取るには、当然ながら商品にバーコードが印刷・貼付されている必要があります。しかし、メーカーが商品にバーコードを印刷するようになるまでには時間がかかり、それまでは店側がバーコードを貼り付ける作業が必要でした。この手間がネックとなり、当初は普及がなかなか進まなかったのです。

バーコードの本格的な普及を後押しした存在のひとつが、コンビニエンスストアでした。1980年代前半にはすでに大きな影響力を持っていたセブン-イレブンが、POS導入の際にメーカーへバーコードの貼り付け(印刷)を求めたことで、商品へのバーコード印刷が進み、本格的な普及が始まったとされています。

こうした経緯から、バーコードによるスキャン方式が完全に普及するまでの間、「手打ち」のレジは現役で活躍し続けていました。だからこそ、昭和から平成の初めにかけて、手打ちの達人たちの神業を目にする機会があったのです。


第4章:手打ちレジの「神業」はなぜ可能だったのか

バーコードがない時代、レジ係は商品の値段を一つひとつ手で打ち込んでいました。なぜ、あれほどの猛スピードで正確に打つことができたのでしょうか。

まず大きいのが、習熟と反復による技術の蓄積です。毎日何時間もレジを打ち続けるレジ係は、キーの配置を体で覚え、見なくても指が正確に動くようになっていきます。これはタイピングやピアノ演奏と同じで、繰り返しによって手が自動的に動くレベルにまで習熟していくのです。ベテランのレジ係ほど、値段を見た瞬間に指が反応する、まさに職人技を身につけていました。

また、当時のレジ係は値段を素早く読み取り、頭の中で処理する能力も鍛えられていました。商品の値札を一瞬見ただけで金額を把握し、すぐにキー入力に移る——この一連の動作が淀みなく連続することで、あの流れるようなスピードが生まれていたのです。

レジ打ちのスピードと正確さは、レジ係の腕の見せどころでもありました。お客さんを待たせないために素早く、かつ打ち間違えないように正確に——この両立を高いレベルで実現していたレジの達人たちは、まさにその時代を支えたプロフェッショナルだったと言えるでしょう。


第5章:手打ちレジが生んだ「お店とのふれあい」

手打ちレジの時代には、現代のスキャン方式とは少し違った、お店とお客さんのふれあいがありました。

レジ係が商品を一つひとつ手に取り、値段を確認しながら打ち込んでいくため、自然と商品に目が向きます。「これ、今日入ったばかりで新鮮ですよ」といった一言が添えられたり、常連客との何気ない会話が生まれたり——商品を介したコミュニケーションが、手打ちの過程の中に存在していました。

また、レジ係の打つリズムや音にも、それぞれの個性がありました。「カチャカチャ」という小気味よいキー音は、お店の活気を感じさせるものでもありました。スーパーの店内に響くレジの音は、賑わいの象徴だったとも言えるでしょう。

子どもにとっては、お母さんの買い物に付いていったとき、レジ係の素早い手の動きを間近で見るのが、ちょっとした楽しみでもありました。「どうやってあんなに速く打てるんだろう」と不思議に思いながら眺めていたあの体験は、昭和・平成を過ごした人々の記憶の片隅に残っているのではないでしょうか。


第6章:スキャン時代、そしてセルフレジへ——レジの進化は続く

バーコードとPOSシステムが普及すると、レジ係の仕事は大きく変化しました。値段を手で打ち込む必要がなくなり、商品のバーコードをスキャナーにかざすだけで会計ができるようになったのです。

これにより、レジ打ちのスピードは個人の技術に依存しなくなり、誰でも一定の速さで正確に会計ができるようになりました。打ち間違いのリスクも大幅に減り、会計の効率と正確性は飛躍的に向上しました。一方で、あの手打ちの神業を目にする機会は、徐々に失われていきました。

そして近年では、お客さん自身がバーコードをスキャンして会計する「セルフレジ」や、商品を置くだけで自動的に金額を読み取るシステム、さらには無人決済店舗など、レジの形はさらに進化を続けています。レジ係が値段を手で打ち込むという光景は、今や歴史の中の風景となりつつあります。

技術の進化は会計を便利で正確なものにしてきましたが、その一方で、あの手打ちの達人たちが見せてくれた職人芸のような光景は、もう日常では見られなくなりました。


まとめ:手打ちの神業は、レジ係というプロの誇りだった

バーコードが普及する前の昭和・平成初期、スーパーやお店のレジ係が見せてくれた「手打ち」の猛スピードは、毎日の反復によって培われた習熟の技術であり、お客さんを待たせまいとするプロ意識の現れでもありました。

値段を一瞬で読み取り、見ることなく指がキーの上を踊る——あの流れるような動きに、子ども心に見惚れた経験をお持ちの方も多いことでしょう。バーコードとPOSシステムの登場、そしてセルフレジへの進化によって、会計はより便利で正確なものになりましたが、それと引き換えに、あの職人芸のような手打ちの光景は過去のものになっていきました。

「カチャカチャ」という小気味よいキー音とともに、猛スピードで会計をこなしていたレジの達人たち。彼ら・彼女らの手さばきは、その時代のお店を支えた、確かな技術と誇りの記憶として、昭和・平成を生きた人々の心に残り続けています。


本記事は、レジスター・POSシステム・バーコードの歴史および日本の小売業の発展に関する公開情報に基づいて執筆しています。導入・普及の時期は業態・店舗によって異なります。


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